クリスチャン作家の三浦綾子さんのデビュー作です。
古い作品なのに、何度読み返しても風化しない、人物描写の力強さに感動します。

簡単にあらすじを。

美しく若い人妻、夏枝が、医師の夫がいない間に、若い医師とつかの間の逢瀬を楽しんでいました。
その間に、大事な娘が誘拐されて、殺されてしまうのです。

子供を失った悲しみから立ち直ろうと、夏枝は夫の友人が勤めている乳児院から女の子を養女にもらいます。
実は、嫉妬に狂った夫がしくんで、養女にしたのは、自分の娘を殺した殺人犯人の娘でした。

自分がいない間に浮気をしていた妻をうらみ、それを表に出せずに苦しんで、殺した男の子供を育てさせることで、妻に復讐しようと思ったのです。

養女にもらった陽子は、心も外見も美しく成長して、父、辻口は陽子を嫌いつづけることが出来なくなりはじめ、
反対に夏枝は、陽子を疎んじはじめて…。

その後、この家庭は、崩壊していくのですが、その過程で、それぞれがそれぞれに、苦しみ、なげき、生きていくことのつらさ、人の心の罪（原罪）について、とても考えさせられます。

どの人間も罪をもって生まれてきているという、作者の思想がこの作品を貫いています。

誰もが罪を背負って生まれてくるのだから、人を許そうと。「許し」がテーマのこの本を読んだ後、私自身の価値観にも影響がでました。
何度も読み返す価値のある本だと思っています。

宗教色も濃くなく、純粋に小説として楽しめる作品なので、重くとらえずに読んでみてほしいと思います。